足場の種類
日本の建築で用いられていた足場は、元々は丸太を用いた丸太足場でした。比較的近年まで用いられてきましたが、安全性などの問題から鉄製の足場材を使った近代的な足場に変わるようになりました。 現代では丸太足場は、伝統建築の修理現場などの特殊な場面で使われるようになっています。
鉄製の足場材の使用は20世紀初頭のアメリカから始まり、日本でも戦前に施工例はありますが、本格的に普及してきたのは戦後になります。現在使用されている主な足場の種類はくさび式足場、枠組み足場、単管足場、単管ブラケット足場になります。ここではこの4種類の足場について、そのメリットとデメリットを説明します。
くさび式足場
くさび式足場は、ビケ足場やくさび緊結式足場とも呼ばれ、現代の工事現場で使用される主要な足場の一つとなります。
足場の骨組みとなる支柱と、作業者が歩く床となる踏み板などの部材からなり、ハンマーでブラケットを叩いて、板と枠組みを固定して組み立てられ設置されます。
くさび式足場のメリット
- 設置・解体がスピーディ
- ハンマーをブラケットで叩いて組み立てていくだけなので、組み立て速度が速く、作業性の良い足場です。支柱や手すりやブラケットなどの各部材の全てに緊結部品が溶接されたユニット式になっていて、ハンマー一本で施工できるので手間がかかりません。
- 組み換え作業が容易
- 組み立てが簡単なので、少々の手直しならば専門家を呼ばなくても現場で組み替えられるからです。部材が軽量でコンパクトなので少人数の職人で作業することができ、当日分の材料のみを運んでくれば良いので、進入経路や車両重量規制などの融通が利くこともメリットとなります。
- 複雑な地形や建物形状に対応
- 真鍮などの組み合わせが比較的に自由にできるので、建物や敷地の形状に容易に対応できます。部材の種類が年々充実しており、より自由度が増していることも特徴です。
くさび式足場のデメリット
- 組立時に騒音が出る
- 組み立て時に、金属製のハンマーでブラケットを叩くという作業が必要になるため、ハンマーを打つ音が周囲に響き、騒音クレームが入りやすいデメリットがあります。
- 騒音クレームが入りやすい
- ブラケットをハンマーで叩く時の音だけでなく、高層部でも基本的に部材は手渡しで行うので、その時の安全対策の声かけがうるさいというクレームが入りがちです。
- 隣家との間隔を必要とする
- 単管足場と比べると設置に場所を取るため、隣家との間隔が狭いと設置できないことがあります。
枠組足場(ビティ足場)
工場で生産された鉄製の基本部材を組み合わせ、組み上げる仮設足場です。主にビルなど高層建築物の工事で用いられます。構造が簡単かつ各部材が軽量で扱いやすいうえに強度もあるため、原則地上45m(14~15階程度)の高さまで組立てが可能です。
枠組足場のメリット
- 設置・解体がスピーディー
- 組み方が共通していて、一定の経験を持つ職人であれば、比較的簡単に組み立てや解体ができます。
- 高層建築物にも対応
- しっかりとした足場を確保することができ、高く組むことができるので、高い位置でも作業しやすく、高層建築物にも対応可能になります。
- 安全性が高い
- 使用される部材の強度が高く耐久性があり、安全性の高さにつながります。また作業床のスペースをしっかりと取ることができて作業しやすく、その分安全性が増します。また安全性の高さが細部までこだわって仕事ができることにつながります。
- 騒音が出にくい
- くさび式足場は組み立てにハンマーを使いますが、 枠組み足場はボルトを使用するため比較的騒音が出にくいです。
枠組足場のデメリット
- 設置に場所をとる
- 部材が大きく、組み立てスペースや作業スペースに大きなスペースが必要になります。また搬入のためのトラックも、それに応じた大きさが必要になりますので、幅の広い搬入路も必要になります。
- 部材の種類が多い
- 枠組み足場はよく使われる足場で部材の種類もたくさんあります。また各メーカーが部材提供に参入しているのですが、サイズ表記でインチとメーターが混在するなど、仕様の統一がなされておらず、ミスマッチの可能性があります。
- コストが高い
- 具材が多くなることからコスト面では高めになります。
単管足場
単管とは直径48.6 mm の鉄パイプで、これを組み合わせて、クランプという金具を噛み合わせボルトを締めて接合します。床が存在しないため職人はパイプの上で作業をすることになります。
最近ではより安全性の高いくさび式足場が使われることが増えていますが、スペースやコストなどの問題があり、小規模な工事の作業現場や狭いビルの間での足場には、まだ単管足場が使われています。
単管足場のメリット
- 設置の自由度が高い
- 単管を組み合わせるという簡単な構造になっているため応用が効きやすく、それぞれの建築現場に合わせて自由に足場を組み立てることができます。幅が狭い場所でも設置でき、角度やサイズが自由に決められるので、様々な形状の建物に対応できます。単管は仮設資材の中でも用途が広く何にでも利用されており、各種サイズが豊富に取り揃えられているので、複雑な地形や規格外の場所、足場の補助や補強にも用いることのできる万能足場材と言えます。
- 入手しやすくミスマッチが起こりにくい
- 単管はメーカーによる違いがあまりなく、部材のミスマッチが起こりにくいという特徴を持っています。また入手しやすく DIYショップや農業資材店などでも手に入ります。
- コストが比較的安い
- 構造が単純で部材が入手しやすいためコストが安くあがるという特徴があります。
単管足場のデメリット
- 安全性が低い
- 職人がパイプの上に乗っているだけですので、枠組み足場やくさび式足場に比べると安全性に欠けてしまいます。
- 作業スペースを確保しにくい
- 単管だけではしっかりとした作業スペースを確保することが難しく、塗料缶などを足元に置くことができないため手が塞がりがちになり作業の質や効率が落ちることがあります。
- 高層建築物に向かない
- 作業スペースや強度の面で高層建築物の柱には向きません。二階建て住宅など比較的低層の建築物で、さらに足場の設置スペースが限られる場合に使用されるものといえます。
単管ブラケット足場
単管足場の安全面のデメリットを克服するべく近年広く使われているのが単管ブラケット足場です。
単管ブラケット足場は単管に足を乗せる板をボルトで固定した足場で、単管足場よりも安全性が高くなります。
最大15メートルほどの足場を組むことができるので3階建て住宅などにも対応が可能となります。この単管ブラケット足場は低層建物の建築や塗装工事などで広く用いられます。
単管ブラケット足場のメリット
- 安全性が高い
- 単管足場が単管に足を乗せるだけなのに比べて、単管ブラケット足場は足を乗せる板を使用できるために安全性が高くなります。
- 強度が高い
- 単管を金具で固定するため、強風などによる外的要因にも高い耐久性があります。
- 組み立ての自由度が高い
- 単管足場の持つ組み立ての自由度を引き継いでおり、高さなどを細かく調整し作業員に合わせて調整することができるので、作業効率の向上にもつながります。
単管ブラケット足場のデメリット
- 工期が長い
- 単管と板を一つずつボルトで固定するため、設置するための工期が比較的長くなります。
- 騒音が出る
- 単管と板をボルトで固定する時に騒音が出るため周囲に迷惑をかけてしまうことがあります。